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Wednesday, September 8, 2010

両親のリタイア

両親がリタイアして早いもので数年経っている。

うちの場合、自営だったので商売を畳んだ。そして、仕事場と兼務していた自宅を売って田舎に引っ込んでしまったのだ。両親は子供達には相談せず夫婦で決めて実行した。それはいい。

意外だったのは、自分の心理的な変化だ。もう上京して20年になり、親とは完全に離れて生活しているにも関わらず、「生まれ育った故郷」から両親がいなくなると知ると、なんだか自分がその土地から切り離されるような感じがして、正体不明の不快感があった。帰るところを失うような感覚だ。自分の中では、もう「東京が地元だ」と割り切って、自分自身でそう信じているし、実家に帰ってももはや知り合いも友人もいないのに。地元のねちねちした人間関係の文化が嫌いで上京したのに。子供の頃から嗅いできた薬品臭(化学薬品を使う仕事です)や、父親の仕事の道具。それらがなくなると、自分の一部を失うかのような感覚だったのだ。

しかし、それは「新しい実家」が生まれたことで埋め合わされた。何度か両親の新居に行く事で、そこが「実家」のような感じが定着してきた。不思議なものだ。父親にとって仕事は人生だった。だから新居にも仕事場をミニチュアで再現してある。それもよかったのかも。

それまで出張で実家のある町に行けば必ず実家に泊まっていた。だから地元のホテルには泊まったことがなかったが、以降、もう泊まるところがないのでホテルに泊まる。これもおもしろいものだ。よく知っているつもりの場所も、そこに泊まってみれば見え方も違う。意外に知らない場所もたくさんある。そして、泊まるところが自由になったので、昔縁のあったところを少し時間を作って訪ねてみたりもしてみた。これもおもしろい。大学や高校、昔住んでいた家、など。故郷の再発見と言ったところか。

結局、両親がリタイアして、故郷を失ったのではなく、新しい故郷を得、元の故郷を再発見することになったようだ。

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