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Tuesday, May 5, 2020

続々 コロナでリモートワークは進展するか

続 コロナでリモートワークは進展するか

 書いてみたのはいいのだが、それでも「会社員には理解されないだろうな」と思った。
なぜそう思ったのか。


恐らくだが、会社員の多くは「会社員として働くのが世界の全てだ」と錯覚しているんだ。頭の中では、角の八百屋やいきつけの美容室などの自営業や零細企業が存在している、のは理解している。だけど、それと「会社員(あるいは労働者)である自分」と何がどう違うのか、知らないし、考えたこともないんだろう。

こう書いてもピンと来ないだろう。

なぜなら労働者として保護される、場合、労働者であれば「無条件に保護される」と思っているんだ。多分、雇用が保護される、って「基本的人権の一種」くらいの感覚で、企業が義務を負って当たり前だと思っている。そこが違う、というのを知らない。習ってないから。

多くの会社員の「感覚」「認識」とは違って、法律の建付け上は世の中の「基本形」は、そういう保護がない自営業者なんだ。 あくまでも基本パターンは自営業者の水準。自営業者でも生活保護、というセーフティーネットがあり、これによって「国民の権利」としての「健康で文化的な最低限の生活」を保障することになっている。
労働者の権利って、別個に存在するのではなくてあくまでもその上の二階建ての二階部分にあたる。追加メニュー、オプションなんだ。 国民は平等に扱わなければいけないわけだから、国としては労働者「だけ」に特別な権利を一方的に付与することはできない。だから、労働者は権利を得る代わりに何かを差し出さねばならないんだ。

雇用は保護されねばならないとしたら、「雇用契約」を一般の商業契約と区別して特別な保護を与える以上、適用には条件がある訳だ。となれば、保護を強くすればするほど、条件の方も厳しくしないとバランスが取れない。何のリスクも条件なく権利だけ付与すると、一般国民(自営業者)と比べて著しく不公平になるからだ。

米国の雇用は、保護も弱いけど制約も緩い。日本の雇用は保護が厚いので制約も厳しい、という違いがある。 そして、その制約条件は「働き方」の基本的な枠組みでもある。この違いを無視して、リモートワークだ、日本は遅れている、などと言うのはナンセンスだろう。
日本は、保護が強い。これは「成績が悪いとかちょっとくらい態度が悪い、というくらいでは減給も解雇もされない(できない)」ということだ。これは企業にとってはリスクだ。お客に悪態をつくような社員は即解雇したいし、重大なミスを犯したら責任を取らせたいだろう、が現実はできない、か強い制約がある。なぜなら「従業員は操り人形で指示した通り仕事をするもので、仕事の失敗は指示する方が悪いから」という事になっているからだ。ここまで書けば、なぜリモートワークが難しいかわかるだろう。「目の届くところで仕事をする」のが前提になっているんだ。何時何分から何時何分まで、会社の指揮命令下にあって、仕事に集中しており、勤務時間外は仕事してない、と明確するような厳密な労務管理をしておかないと過労死などの裁判で会社が負けてしまい多額の賠償金を払わねばならなくなる。また、問題を起こしても指揮命令が適切でないとして「使用者(雇用主)責任」にされてしまう。

 もちろん、リモートワークをやっている企業もあるし、リモートワークじゃなくても営業マンなどは目の届かないところで仕事をしている。これらの企業は企業側がある程度のリスクを受け入れているのと同時に、従業員側も「法律通りでない運用」をある程度許容する文化がある。ベンチャー企業は「できないものは去れ」という文化のところが多く、従業員もその前提で就職する。営業マンも体育会文化のところが多く、成績不良者はクビを受け入れやすい。それでなんとか運用しているが、法律の趣旨には反するし、「不当解雇だ!」と頑張る奴が出てくると企業は対応に苦慮することになる。だから、労組が強かったり官僚的な思考が強い人が多い大企業でリモートワーク導入はリスクが高い。それでもやる、となれば、
(1) 会社の本社に隠れて現場でこっそりやる
(2) リモートでも厳密な労務管理をする仕組みを構築する
の二択だ。

リモートワークだけじゃない。日本の会社はいろいろ窮屈に感じることが多く、米国の会社や外資系はそうではないように見える。実際、外資で働いた経験から、それはある程度正しい、と言える。が、それが「雇用の保護とトレードオフだ」という事を無視してはいけない。少なくとも私の経験上、外資は結果や結果に至るステータスに関して管理は厳しいが、社員の行動の管理は緩い。放牧状態のところもある。その代わり!、結果が出せないと上司に呼ばれて引導を渡される。左遷でも降格でもない。クビですよ。
そして、それが「条件付き」「トレードオフ」になるのは、労働者の権利はあくまでも国民が持つ権利とは別の2階建ての2階であって、国民全員が受ける基本的人権とは違うから、ということ。そして、もう一つ言えば、労働者の権利の多くが雇用主である企業側の義務であるということ。営利企業の義務である以上、利益を出せる範囲のものしか提供できないこと、にも留意する必要がある。あまり権利が強くなると雇用自身が減少してしまうのだ。

コロナ禍の下、リモートワークの議論を見ていて、こういう事を考えてみました。