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Sunday, May 8, 2016

レビュー:BCG流営業戦略

日経ビジネス文庫、BCG流営業戦略(杉田浩章 著)

を一読。

なかなかいい本で、営業の事情にも通じている人の本だなぁ、とは思うのだけど、大きな問題が。

私も営業チームを管理していたこともあるし、営業行動の分析のプロジェクトに参加したこともあるし、この中で言う「ハイ・パフォーマー」として営業をしていたこともあるし、その実績を買われて新規市場開拓もやったことがあるし、逆にコンサルが入ってきて業務分析をされたこともある、が・・・。

まず、成功要因の抽出って非常に難しい。本を読むと、「分析をしてみると」とさらっと書いてあるけれども、デジジタイズする訳だから、「大切なことが網から漏れる」と頓珍漢な改善策が出てきてしまう。何が受注要因だったか、なんてそんな簡単には分からない。特に提案営業では。コンサルタントは、ざっと概況を押さえた上で「何が要因であるか」に仮説をもって臨むのだが、その仮説が間違っていると大切な要素がすっかりヌケてしまう。戦略系コンサルが丁寧にやれば(彼らは抜け漏れのない理論構築が売り物だから)ヌケないのかも知れないが、経験を売るタイプのコンサル(元トップセールスマンがやる営業コンサルとか)だとコンサルタントの経験範囲を超えたところがヌケてしまうことがある。

実際、コンサルが入ってきて業務分析をされた際に、「ええ?」という分析結果が出て驚愕した覚えがある。例えば「素早く(XX日以内)に訪問対応した場合に、受注確度が上がる」と分析されたわけだけど、営業マンの実感から言えば、「そうじゃなくて、それも要素の1つだけど、決定要因はそこじゃなーい!」って。
しかし当時のマネジメントは調査結果を信じて、訪問強化の指示をくだした訳だが、もちろん他の要素を無視しているために期待したような成果が出ない・・。当たり前だ。早く訪問して、「その場でスグ、コンサル営業をかける」事で話を早くまとめてしまうから受注率が高かったのである。ところがコンサル営業できる人間などそういない。そう、実はエース級が同行して支援した案件の決定率が高かった、というだけのことだ。ところが、手柄の問題があるので、同行は記録に残っていない。で、分析を誤ったのだ。だから、コンサル営業のできない2級の営業マンを早期訪問させても受注率は上がらないのだ。ヤレヤレ、だから言わんこっちゃない・・・・。コンサルは営業経験もある人だったが、また、分析結果も思ったより「よく見てるな」とは思ったが、そこは見落としていた。また、報告を受ける側のマネジメントには営業経験者はおらず、「机上の空論」レベルの議論しかできなかった。

結局、今までのプロセス改善の話は霧散して「予算必達」命令が下される。どこでも同じ。結局、トップが覚悟する、ってのは無理。本の中でも指摘されているけれども、トップが矛盾する達成基準を営業現場に押しつける事で自分の立場を保っている訳なので、トップが覚悟して基準を変える、って事には滅多にならないと思う。何しろ「営業がちゃんとしていない」から目標が未達だ!と言って、自分の責任を回避する必要があるからだ。基準を変えることは、当然売上減のリスク要因。でもトップは「売上目標必達」「利益目標必達」なんだから、結局営業の行動は変えられない。トップ、トップと言うが、実際に既成の枠をぶち壊せるのは創業社長くらい。雇われ社長は自分の任期を大過なく過ごすことばかり考えているものだから、思い切った手はなかなか打てない。
結局、トップからの「必達命令」を華麗にスルーして現場改善を優先できるほどハラが座っている中堅管理職がいるかどうか、に掛かっている。そんな人がいたとしても、そのうち転職してしまうか、独立して商売始めますけどね。

この本では成功例がいくつも紹介されていて、各々は「なるほど」なのだが、自分でやれる程ハラの座った役員クラスはそれほどいないだろう。手法は正論と言えば正論だろうが、実施には実施する側もかなりの覚悟が必要だ。 結局は「BCGにお任せください」という事になるのだろうか・・・。

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