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Thursday, July 2, 2020

東京を国際金融都市に?難しいのではないか

香港が揺らいでいる。というか、多分、もう終わりだろう。
で、国際金融センターの地位を狙っているアジアの都市がいくつもあるようだ、東京もそのひとつ。自民党で検討してるらしい。

ただ、経済規模や物理的なインフラ面、汚職の少なさ、等では候補に上がるのはわかるんだけど、実際難しいんじゃなかなぁ・・・・理由を述べてみる。

  • 法人税
    香港は法人税が安いので、多くの企業のアジア本部が置かれていた。法人税が安いことは絶対条件だ。本国の本社とパス・スルーしたいんだから。
  • 法制度
    これには二つある
    • ひとつは、日本の「護送船団方式」は、国を中心として民間企業がコミュニティを作る「内輪」志向のものだ。これは海外企業から見ればグレーな非関税障壁だ。内輪でこっそり相談していろいろ決めてしまう、という日本式の運営は「透明度」が下がってしまい魅力が低くなる。これ止められるだろうか。プロセスを透明化して市場原理で運営したら、「天下り」しにくくなるから官僚が抵抗しそうだ。でも、営業拠点や生産拠点よりも「金融」はより高い透明度を求められる。
    • もう一つは、言語だ。通達や裁判まで全て日本語というのはハードルが高い。英国植民地だった香港やシンガポールは英語で対応が可能だが、日本はなんでも一旦「日本語」を経由しなければならない。日本には多くの外国人が住んでおり、暮らす分にはなんとかなるだろう。日本を市場として活動するなら彼らも日本語を受け入れるべきかもしれない。しかし、「国際金融センター」となるとどうだ。彼らがお客さんだ。弁護士は国際対応可能な人もいるだろうが、検察はどうだ、警察はどうだ、管轄の役所はどうだ、裁判所はどうだ。災害時の対応は?、消防署は?救急車は?病院は?。通達類も全部日本語じゃあ、「開放的」な環境とは言えないだろう。通訳を介さないと日本のシステムにアクセスできないのは非常にフラストレーションが溜まるだろう。「来ていただきたい」なら「日本にいるなら日本に合わせろ」と言うのも変だろう。
  • 労働制度
    日本型雇用は問題だ。特に昨今「ブラック企業」が糾弾され、裁判でも弱い立場だが、そもそも「国際金融」で働く人たちは雇用の保護が必要な人たちではない。ところが、日本だと終身雇用前提なので「優秀な人材を雇えない」というジレンマに陥る。日本人はまだいいのだが、外国人は難しい。日本の雇用体系は終身雇用が前提になってる。終身雇用は雇用に関するリスクを企業が負うので、その分給料が下がる。つまり「優秀な人材を高給で雇う」ことができない。これは海外に進出した日本企業が一様に悩んでいることでもある。給与水準が欧米企業より低いので二流の人材しか来ない、と。米国型のジョブ型雇用に変えないと本当に優秀な人は日本に来ない。
    雇用の保護が強すぎてバランスを欠いていると言えるだろう。と言って、「同じ労働者」である外国人を差別もできない。金銭解雇(一定の金額を払うことで任意での解雇を行うこと)を合法化すべき。長期勤務者で3ヶ月程度の保証があればいいだろう(退職金などの制度がある場合は別途検討が必要だけど)。
    これは一見、労働者に厳しいように見えるかもしれない。しかし、日本の労働者を保護する働きがある。文化的背景、労働や社会に対する考え方や感覚が全く違う外国人を雇用するにあたって、性善説に則った制度ではフリーライダーが出てくる危険がある(というか高い)。フリーライダーを効果的に排除し、かつ、差別も行わない、となると法律の保護レベルを落として企業判断で排除できる仕組みを作るしかない。
  • 生活
    これは前にも書いた通り、ある程度、インフラはある。しかし、「オカネ」への興味だけで来日を検討し、日本文化にも日本の歴史にも興味がない人でも暮らしていけるインフラがあるか、というとそこまではないんじゃないか。金融センターで働く人は、「儲かるから」という理由だけでくるわけで、日本式を強制しない方がいい。帯同する家族が、母国に近い環境で暮らせるか、という部分まで含めて考えると、と整っていると言えないのではないか。日本に興味があればありがたいが、興味がなくてもそれなりに快適に暮らせるインフラは必要だと思う。ある程度はあるが、規模が小さいんじゃないか。
  • 教育・大学
    国際金融事業を支える人材を育てるという意味で、日本の大学は弱い。そもそも英語弱い。金融っていろんな国や産業の「情報」をもとに商売をしていると思うんだけど、英語の情報の受信力が弱いだけじゃなくて発信もできないとなれば厳しいね。アナリストやリサーチャーだって大学と行ったり来たりだと思うし、そういう大学・研究機関が弱いのはイタイ。教育のインフラも変わらないと。2桁の割り算が怪しい人材しか入ってこないFランにお金突っ込んでる場合じゃないと思う。国立大や私立の中堅以上の大学にお金を集中し、それ以外は淘汰すべきだ。今時は学ぶ機会は安く作ることができる。オンライン大学でよいではないか。

と、書いたものの、アジアの都市の中で香港に代わって国際金融センターを運営できそうな国は限られている。中国本土は共産党色が強すぎ情報流通に制限が強くてダメだし、韓国はいまだ戦時中な上にソウルは北朝鮮の至近距離、その上左翼政権が強い(左翼は大企業を悪だとみなして分配しようとする)。その他のほとんどの途上国は汚職や制度、インフラが今ひとつだ。
可能性がありそうなのは、東京(日本)以外では、シンガポール、クアラルンプール、 シドニーあたりではないか。それらの国や都市よりも東京が魅力的な条件を打ち出せるのか、と考えると・・・難しいかな、と。結局、国際化を阻んで国内にしがらみをたくさん作っているので、何か変えようとしても利害関係者が多くて難しい。過去のシステムの遺産で食っている人がたくさんいると変革は難しい。特に雇用は、正社員3000万人が既得権者として頑強に反対するだろう。英語使える層が薄すぎる上に、来てもらえるほどの条件を提示できないのも難点。
そう考えると、最も有力なのはシンガポールか。もともと国際ビジネスハブを目指して香港と競争していた国であり、小国故に国際ネットワークの中でしか発展できず、「国内に閉じた」利害関係者が多くはない。法人税も安く、解雇規制も緩く、外国人労働者のためのプログラムが充実している。しかも公用語が英語だ。最有力の資格があるだろう。ただ香港のような「巨大な中国経済と世界をつなぐ接点」機能はないので、スケールダウンはするか。日本は経済規模自体は大きく、お金はあるのは利点だがそれ以外の仕組みが内向き志向な上に「既得権益」に縛られる事項が多すぎてハブ化には向かないだろう。

 まあ、政府や自民党がどこまで本気でやるのか、見てみよう(ちなみに左系の野党には何にも期待してない)。

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